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滋賀
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滋賀県長浜市にある、宿泊施設とレストランが一つになった「オーベルジュ」と呼ばれるタイプのお店です。
2004年にオープンした同店は、京都の料亭で修行を積んだ徳山浩明(ひろあき)さんが、発酵研究の第一人者である小泉武夫先生と出会い、発酵食品の奥深さに目覚めたことから始まりました。
徳山鮓へのアクセスは、車が便利です。
筆者も友人の車で来店しました。
お店の周辺は住宅と田んぼがぽつぽつと並ぶ静かな景色が続くので、案内の看板を見つけるまでは「本当にこんなところにあるのかな?」と思っていましたが、マップに従って行くと辿りつくことができました。
電車の場合は、最寄りの余呉駅ではなく、タクシー乗り場のある木之本駅で降り、タクシーに乗るのがおすすめです。
木之本駅から徳山鮓は、タクシーでおよそ10〜15分あれば到着します。
予約時に余呉駅に送迎をお願いすることもできるそうなので、電話予約時には相談してみてください。
鮒鮓は、熟鮓(なれずし)と呼ばれる、日本古来の「すし」の一種。
この「すし」は、普段わたしたちが食べているお寿司とはまったくの別物です。
熟鮓は、基本的に塩漬けした魚を炊いたお米で乳酸発酵させて作ります。
日本で古来から作られていた保存食・発酵食品であり、平安時代には各地に存在していたことがわかっています。
滋賀県には鮒鮓(ふなずし)と呼ばれる、琵琶湖や余呉湖で採れるブナを使用した郷土料理があります。
鮒鮓は一般的に癖のある風味で、食べる人を選ぶものとされてきましたが、徳山鮓では癖がなく洗練された味わいの鮒鮓を提供しています。
鮒鮓は大量のお米に塩漬けの魚を漬け込んで作るので、乳酸発酵したお米が残ります。
これを「飯(いい)」と呼びます。
徳山鮓では、この「飯」も捨てずに、ソースやデザードに加工して美味しく活用しています。
滋賀県内には、日本酒の蔵元が40以上もあります。
その中でも有名な銘柄のひとつが、長浜市の富田酒造が造っている「七本槍」というお酒です。
徳山鮓の日本酒は、七本槍一本。
しかも、お店のために作ってもらっている、ここでしか飲めない「オリジナル酒」があります。
名前は「紫霞の海」と書いて「しがのうみ」と読みます。
湖を海に例えた、粋なネーミングです。
ちなみに、こちらのお酒には、徳山鮓発酵学者の小泉武夫さんが開発した酵母を使用しています。
徳山鮓の食材へのこだわりは、食材のほぼすべてを余呉湖周辺の地域で賄う究極の地産地消スタイルに基づいています。
余呉湖で魚を釣り、山で山椒や山菜を採り、地元で採れた野菜を使って料理を仕上げる。
多くの常連客だけでなく、全国の料理人からも愛される料理の根本には、徳山さんの食材への強いこだわりがあります。
猪、熊、鹿のテリーヌは、3種類のジビエが使われているとは思えないほど、癖がなく食べやすい仕上がりです。
かわいらしい亀の型抜きがされているのは、大根のお漬物と煮こごり。
味わい深い万願寺とうがらしに、済んだ味わいの山椒。
緑色のソースも山椒で作られたものだそうですが、ピリピリとした辛味はなく、葉野菜のような味わいがありました。
皿の上の1つ1つが、食べたことのない味わい、かつ衝撃的なおいしさで、一皿目から驚かされました。
食べてみると、口当たりが繊細なことに気がつきます。
半分は生のまま、もう半分は皮の部分が軽く炙られたお刺身で、オリジナルの七本槍ともよく合います。
入店時から気になっていたのは……テラスで焼かれている鮎でした。
針のような道具で、鮎を繰り返しつついている様子が気になり、「何をしているんですか?」と聞くと、「エラと口を開けているんです。放っておくと閉じてしまうのですが、しっかり開けておくことで頭まで火が通り、美味しく食べられます。」とのこと。
この日は晴天だったため、「良かったら外でどうぞ」とお声かけいただき、テラスの席で焼きたての鮎を堪能しました。
しっかり焼けているのに外側も固すぎず、ちょうどいい柔らかさです。
旨味といってもいいほど味わい深いの苦味があり、「おかわり!」と言いたくなるほどでした。
余呉湖で採れた鰻を、長皿にまるまる一匹乗せた、見た目にも豪華な一品です。
山椒から出る柑橘系のすっきりとした風味と、甘く味付けされた鰻の取り合わせに、はちみつレモンを思い浮かびました。
山椒がアクセントになっているので、飽きることなく最後までパクパク食べられます。
日本酒に合わせるのも良いです。
四皿目に引き続き、五皿目も鰻が出てきました。
こちらは先ほどとは違い、燻製された鰻です。
「飯」のソースのお味は、ヨーグルトやクリームチーズを思わせる風味ですっきり軽やか。
このソースを燻製したうなぎに合わせると、鰻単体を食べた時とは全く異なる味わいになるのが不思議です。
驚いたのが、鹿肉の胡麻和えでした。
筆者は大の鹿肉好きで、機会あらば鹿肉を食べるのですが、鹿肉を胡麻和えにしているのを見るのは初めてです。
少し癖のある鹿肉の赤身に、白ごまの香ばしさと濃厚さな風味はとてもよく合っていました。
長皿に3つの熟鮓が盛り付けられています。
まずは、一番左手の鯖の熟鮓から。
鯖の熟鮓には、ふんわりとしたカチョカバロチーズと自家製のトマトソースが合わせてあります。
伝統的な和食とイタリアンが融合したような組み合わせに、新鮮さを覚えました。
鯖の熟鮓の独特の風味を、カチョカバロチーズとトマトソースが上手くまとめています。
ここでは鯖は、アンチョビに近いポジションなのかもしれません。
ここで真打ち、鮒鮓の登場です。
まず、とても綺麗な色合いに目が惹かれます。
乳酸発酵した鮒鮓の酸味はヨーグルトにも例えられるのですが、野菜のような風味があり、紫蘇のようにも感じられました。
旨味もとても強く、これまたよく言われるように「チーズのよう」に濃厚です。
旨味と酸味の両方がしっかりしているので、薄い2切れのスライスだけでも十分に満足できます。
長い器の左手には鯖の熟鮓、右手にはなんと、鮒鮓のサンドイッチがありました。
まさか徳山鮓さんのような高級店でサンドイッチが出てくるとは思ってもいませんでしたが、これがまた美味しいのです。
お食事の最後は雑炊です。
この日は、余呉湖で採れたすっぽんの雑炊でした。
鰻にニコロブナだけでなく、すっぽんまで住んでいるとは、滋賀の湖は高級食材の宝庫ですね。
添えられたお漬物まで、ぬかりなくおいしいです。
雑炊を食べきると、器の底には、徳山鮓の「徳」の文字が。
食事の終わりに、ちょっとしたサプライズをいただいた気分です。
こちらは徳山鮓さん定番のデザート、飯のアイスクリームです。
すだちのジャムとクランブルを合わせたアイスクリームは、レモンジャムをあわせたレアチーズケーキのような組み合わせ。
コース料理の最後まで、副産物である「飯」も大事に使おうという気持ちが伝わってくるようでした。
今回の訪問は2019年9月上旬、まだ暑い夏の時期でしたが、徳山鮓で人気のジビエが味わえるのは寒い時期になります。
人気の「熊鍋」は冬の間、メインのお料理としてふるまわれます。
鰻の脂のノリも季節によって変わりますし、ジビエのお肉だけでなく、採れる植物も違ってきます。
地のものを大事に扱っている徳山鮓だからこそ、その時々の季節に応じた食材が楽しめるのです。
予約は電話でのみ受け付けています。
お電話の際は、食事の提供時間を避けるのが良いでしょう。
予約の時期は半年前を目安に、人気の冬の時期には、少し早めに予約を取るのをおすすめします。
住所 :〒529-0523滋賀県長浜市余呉町川並1408
マップ: Googleマップ
電話番号 :0749-86-4045(電話応対は9:00~12:00、15:00~18:00)
営業時間 :
昼 12:00〜14:30
夜 18:00〜21:00
予算 :
昼 ¥10,000〜または¥15,000〜のコース(税別)
夜 ¥15,000〜のコース(税別)
宿泊 一泊二食付き ¥30,000~(税別)
注意事項 :
店内での動画撮影は、カメラ・スマートフォンともに禁止されています。(写真撮影は可能)
子供連れは不可。
公式URL : 徳山鮓
公開日 : 2019/09/20